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プロフィール
HN:
ねぎす
年齢:
29
性別:
女性
誕生日:
1995/04/17
職業:
学生(JK)
趣味:
辞典を買う
自己紹介:
ねぎす/みど太/きみど太/まぜん太
名前がごちゃごちゃとしていますが、どの名前で呼んで頂いても過敏に反応いたします。
音楽も本も大好きです。
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お借りしたお子さん

空色レンズ様宅萩野さん
椎名 芽衣様宅洋二郎さん
華電様宅猫さん
魅月あざか様宅晴一さん
斜め式ドラム様宅暁さん
_w様宅恭嗣さん
ぱらん様宅猶美さん
ペラッぺらー様宅うめ子さん
綉癒様宅年さん
あいだX様宅日鶴さん
さは子様宅京一さん
ヘロ吉様宅しぐれさん

商店街の方全員お借りしました!もし抜けていたり間違いがあれば教えてくだされば嬉しいです!!
そして勝手にごめんなさい!絡みたかった!絡みたかったから仕方なかった!反省してるけど後悔してない!誤字脱字ありまくりんぐで、まいっちんぐマチコ先生だけど許してちょんまげ。すみません。

勝手に書きましたが、無視してくださって構わないし、何かあればコメントやメッセいただければ!



 男は我を忘れて月見船で騒いだ。本来あまり乗り物が得意ではない貧弱ものだが、酒と食べ物が用意されているとなれば、一山越えなければいけないとしても、嬉々として足をすすめるのである。男は現金であった。その上一人で飲むよりも周りを巻き込みたい気分だった、今日は男は随分と絡みやすい人柄だった。ころりころりと変わる表情と、いつもより不安定な声と、焦点の定まらない瞳。男の名前は大参佳露という。


「今日はよい月だね!よい月だ!」
「飲み過ぎると腹が出ますよ!腹が出て服が窮屈になったら採寸させてくださいよ!」
「勿論だとも・・・月のように真ん丸な腹にしてやろう、酒はいいなぁ!酒はいい!海がすべて酒にならんもんか、なぁ!」


 佳露ははしゃいでいた。無邪気な子供のように危なっかしげのある動きで、枯れた声で、酔って回らなくなった頭の中から出る幼稚な言葉。月を見ているようだが、彼は月見船から身を乗り出し、上半身を界面に垂らし、頭が濡れるほどの体勢で、海が酒になればと唱えている。彼の横で笑いながら見ている男も、酔っているのかいないのか、場に飲まれているだけなのか、常日頃そうなのか、楽しそうに徳利を掲げている。その男は藤堂恭嗣という。呉服屋である、夜は仕事をしているが、今日は特別である、そう言って佳露が引き連れてきたのだ。迷惑被っているのかそうでないのかも、暗い夜の中では謎である。


「萩野君、すれば君の商売も繁盛するんじゃないかい。この海に囲まれた島で!」
「そしたら自分が泳いだら酔うてしまうわぁ。それに先生んとこが大変なるよ。ねぇ?」
「いやぁ、酒はいいと思うよ、ねぇ。」
「先生が二日酔いで潰れたらどうするんですの、程々にするのが大人ですわ。」


 萩野、と呼ばれた男は堺萩野という居酒屋の主人である。日頃から佳露は居酒屋によく足を運んでは締め出され、店の前で酔いつぶれて眠り、恐らく商店街の住人で二番目に迷惑をかけている人物(最も迷惑をかけているのは、佳露が嫌といっても後でご登場していただく)である。

 次に先生と呼ばれた男と、男の横に座る女性である。男は商店街の唯一の医者、笹村猶美である。彼も相当の酒好きである。佳露が飲みに行こうと誘う前から、診療所で看護師である横に座る笹村うめ子を月見船に誘っていた。住人の命を守るのが仕事だが、彼は海水を酒にするということに賛成らしい。そういう能力のある住人がいればよかったと二人で言い出し、佳露は自分に酒という文字が書かれていればと言う始末である(そんなに好きなら呪をかける前に書いておけばよかったのだ)。


「やぁやぁ、もう酔っているのかい。」
「遅いじゃないか日鶴君、けっきょく年君は連れてこれなかったのかい。残念だなぁ。」
「こんなに楽しそうなの残念だね。」


 佳露が濡れた頭を藤堂の持っていた手拭で拭いていると、薬屋の久原日鶴と、占い師の真似事の上手い(占いがわりと当たるから、似非と言い切れないのだ)黒岡野晴一が、船に乗った。実はまだ岸に船が繋がったままだったのだ。遅れてくる者もいるのにも関わらず、酒を残すとか日頃お世話になっている皆と乾杯をする、などということは考えていない。つまり日鶴が酒が好きだと知っていても、空にする徳利が減ることはない。遅れてやってきた日鶴は、佳露の馬鹿な姿を見て「ひひっ」と笑う。彼が気の良い者でよかった。晴一は、最早酒好きが集まりすぎて誰がどれほど飲んだのかわからない空の徳利を規則性に則って山型に積み上げてみせた。そういうものは本能的に崩したいのが人間であるために、真人間(もどき)の佳露は人一倍本能が強く(酔っていると本人は思っていないため、そういうことにしといてほしい)、それを体当りして崩した。


「ハハハ、せっかく積み上げたのに、酷いなぁ、佳露さん。」
「笑ってるじゃないか洋二郎君。」
「洋二郎さん可哀想、僕が癒してあげよっかぁ?」
「えぇ、私がしぐれ君に癒してほしいなぁ。金はある!」


 屋根の下で転がっていた雨宮しぐれが、徳利の崩れた音で目を覚ましたのか、細い体を起こした。今にも壊れそうな体で、可笑しそうにしかし涼しげに笑う洋二郎に近寄り、誘惑した。本屋の主人、山田洋二郎は涼やかで優しい表情で、一連の出来事をみて笑っていた。見目麗しい二人が寄り添っているのは見ていて毒にならないが、酒臭い息と煙草の苦い臭いのする中年が間に入れば、一転して蝿の集りそうな汚らしさがある。全く以て汚い。茶色い背景が見える。それでもしぐれは金に目がくらむのだから、この流れは大人が正すしか無いのだ。


「ほらほら佳露さん、いけませんよ。随分前から飲んでいるんですから、そろそろ家に帰ってお休みになりましょう。」
「魚君、それは私に存分に怒られてこいということかな。やめてくれよ、今日は酒を飲みたいのだ!」
「いつもだろう。水の上で酒を飲むなど吾輩に喧嘩をうっている。さあ、早く連れていってくれ。」


 駄菓子屋の蓮川魚と、煙草屋の夏目猫が佳露をとめた。猫はあまり動きたくないのか、水の上で不安定な船の屋根の下、その上部屋の隅に座りながら、ここにいる全員がいつのまにこの船に乗船していたのか気付かなかった如月京一に、指図した。京一に首根っこを掴まれ、両手に空の徳利をつかんだ佳露は、夜の山へと消えていった。京一はずるずると佳露を引きずる。佳露は踵が地面ですり切れても気付かなかったのだ、酔っているというのは恐ろしい。しかし京一もこの状態に飽きてきた。暗闇の山道は、整備されているといっても危険である。そこで、彼は能力をつかった。夜はすべて影だ、今日は月で照らされており、山の木々はくっきりと地面に形を残している。彼は佳露を引き込みながら、すんなりと一山超えた。影と影をゆくのは、人が歩くよりも速いようだ。

 京一は商店街の入口で影から抜け出し、黙々と引きずった。佳露の小さな駄々と踵が擦れる音だけが、住人の出張っている商店街に響く。しかし、京一は気付いた。魚屋に目をやったのだ。夜の魚屋には猫がおり、それは住人の誰もが知っている、京一も知っているはずである、しかし、京一は佳露を離して自分の口に手を当てた。


「ぶッ・・・猫じゃ・・・猫、猫が魚・・・ック・・・すごい食べ、てる・・・ッ!」


 京一は、猫が魚を食べているのが、とても面白かったのだ。涼やかな表情を歪めながら、悶絶している。猫の正体は、魚屋の文河年なのである。年は一心不乱に猫を食べていて気付かないようだが、第三者が見れば、「猫が魚を食い漁り、それを見て顔の整った男が狂い笑い、中年が一人踵から血を出しながら寝転がっている」のだ。奇妙奇天烈摩訶不思議だ。


「今のうちに・・・」
「下宿に戻るんだよなァ?また月見船に戻るって言うんじゃねぇかと思ったが、お前は利口だろ?」


 徳利を捨て、むくりと上体を起こすと、佳露はまた山道へ向かおうと立ち上がった。歳なのか、立ち上がることに相当な体力を使い、酒のせいで視界が歪む。しかし夜風が冷たく、頭だけは妙に冴えてしまい、飲み直しのために、喉は乾かしておくことに、した、否しようとした。嫌でも生唾を飲まなければいけなくなった。


「暁君・・・じゃないか・・・君は月見船に行かないのかい・・・?」
「どうしようか迷っていたところだが、やめておく。お前が家にいるのに、外に出るわけにはいかねぇ。」


 佳露の住む下宿屋の主人、小鳥遊暁である。下宿の規則を破ることにおいて、佳露は罪悪を感じない、わけではなく、ただ、気づけば破っており、どうにかなると思っている。しかし暁は甘くない。右足を引きずりながら、彼は佳露を見下した。商店街の住人で唯一佳露が恐れる人物であり、そして最も迷惑をかけている人物である。佳露は火照った顔を、頭同様覚まし、そして夜風のせいではなく脊髄反射で身を震わせた。佳露の夜は長い。


「部屋からでも、月は見えるんだぜ。」




おわり
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